天使

老人ホームの昼食時間 静かな高齢者と若い介護職

「済んだなら片づけるよ!」 耳元で尋ねる大きな声

「あ、待って 私が代わります」 ささやく小さな声

「がんばって食べようね」 やさしく語り掛ける


昼食後のトイレは長い行列 時計に目をやる職員

「今日からオムツにしよう!」 車いすを回転させる

「あ、私が代わりますから」 そっと近づく声

ひとつの尊厳が 失われなかった瞬間


職員の昼休み 賑やかに談笑する輪から出て

トイレタイムの名残の床を拭き また輪に戻る


誰も気づいていないけど 片田舎の施設で

ぼくは天使を見たんだ