小は大を兼ねる

相変わらずの世の中に望みを失いかけ

ずっと変わらない貴方に希望を見出す

世界中を敵にしても構わないと強がり

貴方に信じてもらえれば十分と思える

小さくまとまって満たされていく心が

大きくつつみこむ私でいさせてくれる

360度転換

紛失してしまったものが見つからないときは

最初に探したところを再び探すと見つかることがあるように

一周まわって元のところに戻ってきたときに

本当に求めていたものは初めから分かっていたことに気づく

死は美しくない

ちっとも美しくない死を私は見てきた

つまらないプライドで命を落とした人

管に繋がれて最後はボロボロだった人

貴方に命を捧げるといって求愛する人

崇高な目的のために見事に死んだなら

無残な死骸を衆目に晒せるのだろうか

壊すために産まれてきた命なんてない

自然に眠るように消え去るのが美しい

バトルゲーム

たとえゲームの世界であっても

生き物を殺すことは楽しめない

たとえ架空の世界といわれても

そんな表現の自由は趣味が悪い

平和を求めて戦争に反対する?

リアルな殺し合いは絶対ダメ?

でも殺し合うのは現場の兵士達

命令する人達にとってはゲーム

皆が大好きな陣取り合戦ゲーム

私は興味ないから愛犬とお昼寝

さがしもの

何かをさがしているなら

調べたりしてはいけない

余計な雑音が増えるだけ

誰かに聞いてほしいなら

声を大にしてはいけない

無関係な者が答えるだけ

目を閉じて眠りに就こう

そこで感じたことだけが

さがしものへと君を導く

神を信じると人間は狂ってしまう

対立する悪魔を信じて闘争するか

悪の概念自体を屁理屈で否定する

.

狂ってしまった人は笑顔で教える

この世界は神様が楽しむゲームよ

生かし合いも殺し合いもおんなじ

貴重な体験として必要なことなの

映画の中の殺人鬼と被害者だって

撮影が終われば仲の良い俳優たち

あなたを傷つける憎むべき相手は

わざと嫌われ役を演じてくれたの

だからあなたは相手に感謝するの

.

人間の頭で神を考えるとこうなる

だから神を信じるのはとても危険

.

ひとつだけわたしがいえることは

わたしたちが最初から完璧ならば

それは神から愛されていない証拠

自由というものが奪われてるから

.

迷う自由を与えるほどの深い愛は

どれほど深い悲しみを伴うだろう

勝者

トップに登り詰めたって?

じゃあ底辺のオイラの勝ち

土台に近い方が有利なのよ

.

ハイスペック男をゲット?

凡人ゲットのアタシの勝ち

能ある鷹は爪を隠すものよ

.

富も地位も名誉も失った?

くやしいけどアンタの勝ち

それで生きてる者が最強よ

天使と悪魔

コントラストを強め過ぎたら

真っ白と真っ黒になるように

光が強過ぎると暗黒が生じる

正義の目には悪人に見えても

自然な目には灰色でしかない

ぼんやりとした無感覚な世界

未熟な者達がしていることは

目覚めた者には残酷に見える

光と闇だけの世界こそが地獄

不完全な者達を許してやろう

自然はモノクロじゃないから

透明

いつも

試されているようだ

きみは

見透かしてるようだ

いつも

自分らしくいるように

きみは

気づいていないけれど

繊弱の至福

冬でもシャワーばかり

でも風呂が何より好き

時間の無駄と友は言う

至福の時間と我は思う

冬山の露天風呂は極楽

脆弱な肌を外気に晒し

芯まで温めてもらえる

あえて無防備になって

柔らかく包まれたまま

柔らかい心を取り戻す

きっと似たものを求め

私は詩を綴るのだろう

純愛2.5次元

浮気性って風当たりが強い

男は浮気するのが健康とか

生物学で解明されてるとか

女の浮気は擁護しないのか

だから男はロマンを求める

一途な愛のある二次元世界

それで終わりたくない者は

2.5次元の純愛を目指してる

パステル

感情的になったこと

そっけなくしたこと

気にしなくていいよ

熱いのも冷たいのも

常温じゃないときは

自然な君じゃないよ

むき出しの本性って

映画監督は言うけど

血走った眼をしたり

痩せて骨が見えたり

健康な状態じゃない

強い色は弱さの露出

淡い色は秘めている

深い想いを湛えてる

それがほんとうの君

タイトロープ

高所恐怖症なんだから

決して下を見ちゃダメ

恐怖から目を逸らして

目を閉じたら落下する

しっかりと目を開けて

まっすぐ前だけを見る

背後から囁く声がする

綱渡りなんて必要ない

今いる場所が一番だよ

君はきっと空を飛べる

勇気を出してジャンプ

そんな雑音に耳を塞ぎ

深呼吸をして一歩前に

まっすぐな視線の先に

手を広げて待っている

人影から目を離さずに

一歩ずつ進むしかない

たとえ谷底に落ちても

それしかないのだから

空っぽの愛

誰もが素通りする中で

貴方に手を差し伸べた

ちょっとした親切心に

貴方は大きく期待した

きっとより大きな愛を

貴方に与えるだろうと

.

勘違いしないでほしい

お金持ちが大概ケチで

庶民が気前良いように

有り余る愛情などない

甘やかす優しさもない

.

私が持てる愛の全てを

命すらも捧げる相手は

私に何も求めてこずに

逆に与えようとする人

空っぽになりたい同士

Star People

周りに誰もいなくなったら

ぼくたちはタメ口で話そう

この世界の時のモノサシで

きみがどれだけ年下だって

貴方がどれだけ年上だって

ぼくたちは悠久の時を駆け

この世界を通り過ぎるだけ

百年に満たない寿命のなか

この世界に生きる人のなか

ぼくたちは先輩後輩を演じ

かれらの上下関係に合わせ

生きていかなきゃいけない

だから誰もいないところで

ぼくたちはタメにもどろう

永遠という年齢をかさねて

上も下もない宇宙の海原で

笑顔の似合う貴方を


寂しげに佇ませてた


二人っきりの空間に


風が吹くのを感じた


貴方が私を見つめて


なにかを伝えてきた


それを忘れないよう


貴方を見つめていた


二人が見ていたのは


お互いの姿ではなく


二人を取り巻く世界


それを貴方は感じて


私もそれを思い出し


悲しみを瞳に宿した


二人の間に風が吹く


私たちが誓ったこと


二人以外の世界の為


私たちは生きていく

遭遇 ~ Encounter

大事な出逢いは常に

思いがけずに訪れる

大怪我をするときは

気を抜いているとき

.

事前に準備をすれば

ミスは減らせるけど

自己満足に陥ったら

見過ごしやすくなる

.

こころここにあらず

無防備は危険を招き

こころをここにおく

無心は奇跡を起こす

.

不意打ちを喰らうか

不可思議に出遭うか

まっさらな心の肌に

まっすぐに貫かれる

せつな

はい その人は素敵な服を着ていました

でも その人の顔をよく思い出せません

その声は私の心のひだに心地よくふれて

その言葉は凍えた心を包んでくれました

でも 何を言われたのか思い出せません

いいえ 思い出せないままでいいのです

それは 形にできるものでないからです

そのほうが 伝わるものだと思うのです

真実が 目に見えたことはあるのですか

言葉が 愛を伝えたことはあるのですか

私は刹那を抱いて生きていきたいのです

少女

少女はゆっくりつぶやく

一人ぼっちになったのは

あなたと出会うためなら

淋しさも愛しく思えるの

温かい白い光に包まれて

遠くを見つめる眼差しで

少女はゆっくり微笑んだ

何もない僕ら

まだ僕らが何者でもなかった頃

まだ勝ち組でも負け組でもなく

若くて未来があるというだけで

若くて未熟だということだけで

何者でもないことを許されてた

安い時給のバイトでも気にせず

同年代と対等に話ができていた

大人になって昔を振り返るのは

成功したか失望した人たちだけ

その他の人は今のことで精一杯

そんな中で僕は立ち止まってる

このまま何者にもならないまま

いまでも何者でもない君とただ

しずかな時間を過ごしていたい

誰かに勝ちたいと望まない僕と

誰かの迷惑になりたくない君と

会話のない二人の空間で過ごす

それ以上に望むことは何もない

何もないことが何よりも幸せで

何者でもないことが何より自由

二人の瞳の中に全てがあるから

黄昏

病気になると

欲が全て消えて

当たり前の事が

美しく見えるという

元気になると

元に戻るそうだけど

.

大人になると

純粋さが消えて

15の自分の心が

消えてしまうという

心が風邪をひくと

昔の自分に戻るという

元気になると

元に戻るそうだけど

.

戻りたくないと思って

君は一人ぼっちになる

もしも昔に戻れたなら

そんな期待を胸に抱き

それは君じゃない

醜い心の自分が嫌いなのは

本当の君の心は綺麗だから

その違和感に耐えられない

.

人を妬む自分が嫌いなのは

自分らしさが出てないから

苛立ちと焦りを募らせてる

.

自分が低レベルと思うのは

誰かと比べたからじゃなく

本当は高い位置にいるから

.

自分を卑下する暇があれば

落ち込んでる暇があるなら

遅すぎるということはない

君は君らしく生き始めよう

聖夜

12月25日に君と出会った

そしてぼくはすぐ君に謝った

ちょっとした人ちがいだった

その日から何年もの間ずっと

君は遠くからぼくをみていた

そのことをぼくは知りもせず

手紙をもらうまで忘れていた

貴方との出会いは神様からの

クリスマスプレゼントだった

そう最後に君は書いてくれた

あれから長い年月が過ぎた今

淡い想いでその時を思い出す

時々虚しく思える僕の人生に

儚く消えてしまいそうな命に

意味を与えてくれた君の言葉

聖なる日のプレゼントだった

君は今どうしているだろうか

民衆の敵

見えないものは怖くない

少なくとも目をそらせる

確実に老化していく体も

限られた寿命の砂時計も

信じていることの真相も

見えないかぎり怖くない

少なくとも逃避はできる

みんなが酔っ払ってれば

しらふになる必要はない

大衆とはそういうものだ

人気者になりたいのなら

夢を売らなければダメだ

酔わせてあげなきゃダメ

真実を差し出された時は

うまくかわさなきゃダメ

真実は人それぞれってね

しらふのままでいる君を

絶望に直面している君を

逆境でもがいている君を

現実逃避を拒んでる君を

大衆を敵に回せる覚悟を

私は心の底から称えよう

TUN-DELE

過ぎた日を振り返らない

同窓会に出たこともない

好きな人にも執着しない

同情を求めることもない

自由という言葉は冷たい

繋がってる温もりがない

自分でも自分が食傷気味

ツンデレと言われてる君

似ているから分かるのさ

ぼくの知っている猫にね

男気

ジェンダーなんとかで

ボーダレスがどうとか

そんな浮っついたもの

みじんもなかった時代

女々しさの入る余地も

優しさの付け入る隙も

まったくなかったお前

その男気に惚れたんだ

男同士しか分からない

そう思っていたけれど

男が男に惚れる気持ち

女のお前に感じたんだ

アイス

薄い氷の欠片のように

手の平で溶けてしまう

だから冷たい筒に入れ

きみのもとへ届けたい

電報みたいに短いけど

容量には限りがあって

一言しか言えないんだ

儚く消えてしまうけど

やさしく皮膚に染みる

過剰な言葉を躍らせず

静けさの中で待ち続け

文通のように伝え合う

そんな繋がりがいいね

君のせいだよ

野に咲いていたら

花は枯れなかった

空を飛んでいたら

鳥は弱らなかった

外で暮らしてたら

犬は悩まなかった

全部君のせいだよ

花に優しく語って

鳥と仲良くなって

犬に笑顔を向けて

彼らは君の愛情に

こたえようとした

人と同じになった

君がそうしなきゃ

彼らは自然の中で

彼ららしく生きた

全部君のせいだよ

君が彼らを変えた

でも彼らは言った

全部君のお陰だよ

何処へ

ぼくたちは何を求めているのだろう

ぼくたちはどこへ向かおうとしているのだろう

何かを追いかけて

どこかへたどりつこうとしているぼくたちが

それを手に入れて

そこで生きることができたとき

ぼくはきっと全てを手放して

あてもなくそこから離れていくだろう

頬をなでる風は

何者でもないぼくを

そこにいるだけのぼくを

なにもいわずに

むかえてくれている

ぼくは風を感じていたいだけ

風に触れられていたいだけ

そばにきみがいても

ずっとそうしていたいだけ

そばにきみがいるから

ずっとそうしていられるんだ

ふとまわりをみわたすと

ぼくは友だちに囲まれていた

何を求めていたんだろうね

どこへ行こうとしていたんだろうね

ぼくたちは

これまでずっと

石畳

きみに気づいてもらうように

足元の地面は動いたりしない

きみが気づくことはなくても

足元を守っているだけでいい

踏まれているっていうことは

土台であることの誇りなんだ

Touch my heart

誰もわたしのこと わかってくれない

そんな子供じみた 我が儘はいえない

きみが心を開けば 聞いてはもらえる

返ってくることば きみはわかってる

きみがほしいのは なぐさめじゃなく

わかってくれる人 ことばはいらない

You…

君が叫ぶ

ここに自分がいると

君が叩く

誰か自分に気づいてと

君が自傷する

生きてると感じたくて

君が泣き喚く

情緒を感じとりたくて

君が詩をかく

誰かの心に触れたくて

Final

君が倒れる

根元に斧を立てられた木が

ゆっくりと傾くように

.

君が傾ける

目元に笑みをたたえた顔が

ゆっくりと語りかけた

.

まだ終わってはいないさ

そう

君はまだ終わってないさ

.

地面に崩れおちる寸前に

渾身の一撃を喰らわせる

そう

君が終わってしまう前に

ふっくら

焼き過ぎたパンケーキ

しぼんでしまうように

やり過ぎた運動のあと

身体が細くなるように

干渉し合ってしまうと

やがては冷めてしまう

だから私たちは永久に

まったりと過ごしたい

つかず離れずの距離は

ほんのりと温かくって

ふっくらして心地良い

ホットケーキミックス

ふわふわ

受け流すことを きみは覚えた

心の力を抜けば すり落ちてく

諦めてしまった そう感じてる

でも考えてみて それがきみさ

穏やかなときが 好きだったね

流れてくる風を 感じるために

ゆったりしてた 小さな頃には

ふわふわしてる 羽衣をまとい

とても軽かった それがきみさ

人生ゲーム

ゲームは人気だけど

ゲームはしないんだ

人生はゲームだって

楽しんでなんぼって

確かにそうかもなあ

ゲームは遊びだよね

ゲームで倒すことも

ゲームで殺すことも

遊びだからといって

すべてが許されてる

表現の自由なんだと

スピ系の人が言った

人間の魂は死なない

だれかを殺すことも

だれかを救うことも

経験として同じ価値

私たちは俳優と同じ

殺人鬼と被害者の役

役割を演じてるだけ

俳優どうしは仲良し

この世は神のゲーム

神さまの退屈しのぎ

だからゲームは嫌い

だからスピ系も嫌い

君もそう思うって?

きっとそれは違うよ

自然が大好きだから

自然の掟は弱肉強食

互いを喰い合うこと

自然の愛好家は言う

生き物の数の調整で

バランスが保たれる

だから自然も嫌いだ

自然は自然じゃない

自然も人工的なもの

私だけそう思ってる

だれも同意はしない

私だけそう感じてる

英語でいうゲームは

狩りの獲物でもある

命のやりとりゲーム

逃げられないゲーム

いや脱出してみせる

脱出させてあげるよ

それが私の存在理由

テルマエ・ロマエ

出向先のオフィスの一室

コロナ禍でのひとり体制

徒歩圏に宿を借りている

徒歩とはいえ優に30分

着いたときには汗だくだ

セキュリティ万全のビル

カードなしには入れない

入室したらまずは着替え

汗まみれの服を脱ぎ捨て

廊下の洗面所で体を拭く

はっと気づいた時は遅し

一瞬で汗が冷や汗となる

カードを室内に残してた

もはや入室不可能となる

上半身は裸で手ぶら状態

スマホも財布も部屋の中

もちろんPCもデスクの上

通信手段が絶たれた状態

公衆電話用の小銭もない

裸のままでは外へ出れず

明日からは週末の二連休

万事休すということか?

ポケットの中に鍵がある

宿に戻れば通信が可能だ

いや裸では通報をされる

上半身だけなら大丈夫?

いや絶対に変に思われる

廊下で三日三晩過ごすか

ここには給水機とトイレ

冷蔵庫には多少の食べ物

生き延びるのは可能だが

週末に管理人と会ったら

上半身裸の不審者になる

いやその前に無断欠勤だ

いや電話に出ないのなら

昨夜の地震を心配される

絶望的な状態だけれども

どこか冷静な自分がいる

脱出口を探すかのように

周囲をぐるりと見渡した

エレベーターと廊下の間

目隠し用の薄いカーテン

無地だから使えるかも?

レールから簡単に外れた

上半身にぐるりと巻いて

ベルトで締めて鏡を見た

古代ローマ人の男がいた

後ろ姿を見ても悪くない

むしろお洒落にも見える

体を鍛え上げているため

筋肉ナルシストみたいだ

人目につかない裏道でも

15分で走り抜けられる

意を決し非常階段に出る

さいわいにも人影はない

緊張した足で階段を降り

顔を下に向け駆けだした

マスクも室内だったから

冷たい視線を避けるため

人通りの少ない道を選ぶ

30度近い気温の中でも

息を殺して静かに駆けた

道行く人は振り向かない

目立ってはいないようだ

坂道も一気に駆け上がる

太ももがパンパンになる

やがて宿が視界に入った

宿のあるビルに辿り着き

エレベーターには乗らず

階段で5階の宿へ駆ける

部屋に入ってPCを開ける

滝のように汗が溢れ出す

隣町に住む同僚にSOS

快く出向に応じてくれた

手早く別の服に着替える

そしてまた徒歩で30分

車の同僚と同じ所要時間

不思議と疲れない30分

同僚の笑顔に迎えられた

当日に社内で命名された

テルマエ・ロマエ事件と

青年の遺したもの

今から80年ほど前のこと

青年は8人の兄弟姉妹の中で特殊だった

心優しく正義感が強く敬虔なクリスチャン

父親は満州で財を成して女を作り時々帰宅するだけ

青年は父に向い「お母さんを大事にしてください」と訴え

「生意気を言うな!」と平手で張り倒された

末娘のK子は兄弟姉妹から軽く扱われていたが

青年はことさらK子を可愛がってくれたとK子から聞いた

K子は晩年に病で意識を失う前に兄の名前を呼んだという

.

青年は成績優秀で将来は小説家を目指していた

同じく作家志望の親友Aは

「彼にはかなわない」と青年の才能を認めていた

しかし青年は東京から長崎へ移り、医学部へ進学した

戦地へ送りたくないという母の願いを受け入れたのだ

.

故郷の母へ送った青年の手紙が残っている

「お母さま、今日は学友たちと川辺の原っぱに寝そべって

皆で大声で歌をうたいました。これが青春なのですね」

.

それからほどなくして

悪魔の閃光が長崎の空に炸裂した

小説家を夢見ていた21歳の青年の命は一瞬でかき消された

母親は長寿を全うしたが

息子に起こったことに直面することがどうしてもできず

最期まで長崎の地を訪れることができなかった

.

私は青年の遠い親族にあたるが

会ったこともない彼にあまり興味はなかった

ただ彼を絶賛していた親友Aが芥川賞作家であることは誇りに思えた

親友Aは青年の命日にいつも母親の家を訪れ

白い花を捧げていたという

.

私は決して穏やかな人間ではなく、むしろ荒っぽいが

なぜか平和への深い願いが幼少時から心の奥底から湧いていて

友達と小さな平和推進のNPO法人を創設した

なぜか私はその設立登記を平成12年12月12日にしたかった

つい最近になって知ったのだが

青年の誕生日は大正12年12月12日だった

.

私は十代のころはカソリックの神父になろうと考えていた

教会に失望して断念したが、教会をモデルにした私小説を出版した

最近になって青年が遺していた小説を目にする機会を得た

ロシアの教会が舞台となっていたが

不思議なことに文体が私となぜかよく似ていた

生前に私の小説を読んだ青年の妹K子も不思議そうに言った

「あなた、兄さんの生まれ変わりじゃないの?」

でも私は青年のような優しい人間でもなく

青年のような美しい顔立ちもしていない

ただ、K子が癌になったとき

私は抗がん剤を拒否させ、ある方法で癌を完治させたことがある

癌が消滅したことを受けて担当医は

「じゃあ癌じゃなかったのかもね」とシラを切った

.

私はイラストレーターでもあり、タヌキのイラストを得意としていた

私がイラストを提供した英語の教本をK子に見せたときに言われた

「不思議ね。兄さんもタヌキのイラストばかり描いていたの」

.

私は体を焼き尽くすような真夏の暑さが苦手だ

しかし暑さから逃げることが嫌いで立ち向かいたくなる

酷暑の中であえて運動して熱中症になったこともあった

.

私は戦争の愚かさを心の底から憎んでいるが

核兵器の廃絶が平和につながるとは思っていない

核兵器は人を殺したりはしない

それを使う人間が人を殺すのだ

自分を守る恐怖心のために相手を悪者だと思い込むことで

自分の弱さを正義感と置き換える

そういう人間の愚かさが戦争を引き起こす

.

平和のためには人間の愚かさを変えるしかない

そのためにどうしたらいいのかは分からないが

平和のためならいつでもこの命をくれてやる

その思いは永遠に変わらない

宇宙人ジョーンズJr.の独り言

子供の頃はやたらと年上に見られた

いま現在はやたらと年下に見られる

おそらく精神年齢が変わっていない

でも精神は月日と共に変わるものか

歳月に合わせて変えているだけかも

わずか十年や二十年で変わるものか

体力や気力の衰えを成熟としている

人生経験をもとに年下にアドバイス

バイトでも三日早ければ先輩になる

この惑星の上下関係はとても窮屈だ

滋養

体が欲するものがあるように

心が欲しているものがあるよね

それは必要なものなのだから

自然が与えようとしてるのだから

遠慮せず 迷わずに

求めていいんだ 手を伸ばしていい

奪ったりしてはいけないけど

そっと差し出してみればいい

だって そうしなかったら

あなたに与えることができないんだから

泣いて訴えている赤ん坊みたいに

手を振り回してたら受け取れないよ

信じて手を差し出せばいいんだ

だれもその手をはたいたりはしない

必要なものをやさしく手の中に入れてくれる

優しくない

見かけによらず優しいと言われる

いや、見かけ通り、優しくはない

誤解される理由は分かってるんだ

悲しさが優しさと間違われるだけ

親切を返せないままに逝った人に

恩を返せればと後悔する気持ちで

他人に代わりに親切にしてしまう

そんな悲しい目が誤解されるだけ

前を向こう

貴方の身に起きた事に

全て意味があるのなら

学んだ事を紙に書こう

感じた事を心に刻もう

誓った事を声に出そう

貴方は悔いることなく

明日に勝利するために

この世界に生を受けた

ただ幸せになるために

ただ笑顔になるために

前を向いて生きていく

ハイスペック

新しいスタッフはハイスペックです!

朝礼で部長がプロフィールを紹介した

外国人には通じない和製英語のひとつ

機械の性能などをいうときに使う表現

人格をもつ人間はモノじゃないのにね

凡人とはモノが違うっていうことかな

知的障害の人はロースペックなのかな

彼らにはピュアな何かをいつも感じる

彼らをハイスピリットと紹介したいな

良いとこ取り

フェミニンかボーイッシュか

迷わずにどっちも選べばいい

相乗効果で魅力が倍増するよ

.

苺ショートと苺ロールケーキ

二人でどっちも食べればいい

交互に食べたほうが美味だよ

.

二兎を追う者は一兎をも得ず

一つに絞らなければ中途半端

そうやって贅沢を戒めてきた

.

でもそれは悪魔の囁きなんだ

良いとこ取りを覚えられると

人は神様に近づいていくから

.

でも神様はそう願ってるんだ

誰だって二刀流になれるんだ

誰も

誰も支配したくない

依存する人を見たくないから

誰も束縛したくない

不自由な人を見たくないから

誰よりも強くいたい

無意味な闘いを避けたいから

誰よりも弱くいたい

相手の痛みを理解したいから

誰もが分かっていて

誰もが目をそらしている本音

相思相愛

あなたが心の底から好きなもの

あなたも同じくらい好かれてる

周りに認めてもらうためでなく

本当に純粋に大好きなものなら

障害はあなたの迷いでしかない

必死になって追いかけることは

アクセルとブレーキを踏むこと

ただ愛情をもって抱きしめよう

あなたの胸に飛び込んでくるよ

あなたの良いところ

ちょっと不思議に思えるくらい

あなたの良いところばかり褒めてくれる人

振り返ってみたらいなかっただろうか

きっと欠点に目がいかない大らかな人かな

あなたはそう思ったかもしれないけど

本当に素直に正直な気持ちを言ってただけ

小さな欠点なんて焼け石に水みたいなもの

褒め過ぎだってあなたが感じたとしたら

不思議な人だったって片づけてしまうのは

あなたが自分の素敵さに気づいていないだけ

あなただって経験があるはず

こんな素敵な人なのになぜ自己評価が低いのって

あなただってきっとそう

足りないところばっかりに目が行ってしまって

とてつもなく素敵なところに気づいていない

思い出してみようよ

きっといたはずだよ

きっと言われたことがあるはずだよ

その人が褒めてくれたことは

ぜんぶ本当だよ

本当のあなただよ

遺品

あなたの遺骨 べつにもらいたくはない

自分にとってのあなたは そんなものじゃない

あなたの残した伝言メモ すてられない

自分にとってのあなたは そんな人だったから

そしてボクはいなくなった

嬉しそうに笑ってる

父も 母も 兄弟も

でも 時が経ったら

みんな消えてしまう

いなくなってしまう

短いからこそいいの

長くなると退屈なの

そんなの負け惜しみ

目を背けているだけ

そうして幼いボクは

夜に眠れなくなって

ある日 姿を消した

Sweet Home

このご時世

電車に乗らず徒歩通勤

毎朝出会う鳥たちが増えた

都会の鳥は人懐っこい

.

閑散とした職場

いつも窓際に座っている

風に揺れる木の音が好きだ

ただ今日は少し騒がしい

.

バサバサ バサッ

目の前の枝に鳥の姿

枯れ葉とナイロン紐の固まり

巣作りを始めたらしい

.

いつも窓際族がいるから

カラスが来ないと思ったのかい

顔を近づけたらチラ見する

写メを撮ると首をかしげる

.

ヒナが生まれたら

にぎやかになりそうだけど

自然な環境音のようなものかな

愛の巣っていいね

Child of Cosmos

きみがちっちゃなころは

家族がきみの世界だった

やがて家のそとへ出ると

学校がきみの世界だった

そして社会人になったら

職場がきみの世界になる

息苦しくて見上げる空は

建物に囲まれた枠のなか

居場所が見つからなくて

全て終わりにしたくなる

誰もいない場所へ逃げて

一面の星空を見てごらん

そこがきみの故郷なんだ

胸いっぱいに息を吸って

仲間たちを思い出すんだ

瞬く光が見守っているよ

きみは一人じゃないんだ

Something

週末は何してたのって?

ずっと海を眺めていたよ

なにかあったのかって?

広い空と海だけだったよ

.

連休中は何してたって?

涼しい山の頂上にいたよ

なにをしてたのかって?

水平線をながめていたよ

.

そう、何かあったんだよ

だけどうまく言えないよ

その場に貴方もいたなら

きっとわかると思うんだ

外見100%

心の表面で思うことと

奥で感じることは違う

外見に現れてるものと

内面は一致していない

中途半端が一番わるい

上辺だけ見ている人は

人間嫌いになっていく

いつか透明になりたい

全てを見透かされると

恥じらいを通り過ぎて

逆に安心できるという

内面がそのまま外見に

不細工も整形も無関係

顔に性格がすべて出る

いつかはそう進化する

そんな風に願っている

プリンセスプリンス

ひとりの男性 ひとりの女性より

複数の男性、複数の女性が醸し出す

男性性、女性性が好きだ

男性から感じる男らしさよりも

女性から感じる女らしさよりも

女性から感じる勇ましさ

男性から感じる淑やかさが好きだ

きっと私たちはずっと

併せ持つこと 内に宿すことが

罪な存在にしてしまうと恐れて

分けてはいけないものを分けてきた

男も 女も 存在していないんだ

だれもが男であり 女であるんだ

彼に恋してる彼女は 

お姫様に恋をしてる王子様なんだ

優しさの見返り

優しくされると

あなたは戸惑う

見返りを求められたら

きっかけにされるなら

困ってしまうから

.

宗教で説かれる

無償の愛という

母性のようなものなど

他人に期待はできない

甘えてしまうから

.

あなたは誰かに

優しくするとき

その場から早く去りたい

見返りもお礼もいらない

本当にいらないから

.

ちょっと考えて

ひょっとしたら

そんなあなたと同じ人が

優しくしてくれるのなら

泣いてしまうかな

Virginity

見えないもの

大事なものばかりじゃない

見えない細菌

誰にも好かれてなんかない

キスとかその先とか

大人への一歩っていうけど

飛沫で簡単に間接キス

思ったより早く皆が初体験

マスクが大事っていうのに

守るのが大事っていわない

濃厚接触は自慢にならない

NOという自分を大切にする

君のVirginity

Best Friend

あなたがちょっとうれしいのは

誰かが好きと言ってくれること

あなたがとってもうれしいのは

誰かが心から愛してくれること

あなたを気持ちよくさせるのは

分かる気がするといわれたとき

あなたをしあわせにさせるのは

すべてを分かってもらえたとき

ちがいを尊重し合うことよりも

あなたは一つになりたがってる

共存でも依存でもないつながり

あなたが本当に求めているもの

彼は死を知った

武士道の本質が、なぜ

死を見つける事なのか

死を恐れない無謀さが

闘いに勝つ事に通じる

そう漠然と思っていた

死を恐れる心の弱さが

死を覚悟する事を求め

自己犠牲を良しとする

弱者の生き方に思えた

命を捧げるという行為

その見返りを求めずに

ただひたすらに愛する

危険な思想だと感じた

すべて違っていたんだ

人は死を覚悟するとき

もっとも清らかになる

物理的にとらえるなら

もっとも効率よく動く

最高の状態でいられる

死を見つけた者こそが

永遠を生きる者となる

だから彼は貴方と離れ

恋人にはならなかった

貴方は彼の命の置き場

彼が死ぬ意味だったから

サクラチル

束の間の蜃気楼のように

咲いて散りゆく桜吹雪に

優美な麗句が彩を与える

晴着を纏うのは僅かだけ

儚く散るのが美しいなら

讃える言霊も儚く消える

花のない樹木が残るだけ

見向きもされず佇むだけ

若さを花に譬えるのなら

若作りは造花に近いもの

表層的な美であろうとも

讃える者も表層的ならば

行きずりの恋と同じ定め

少し輝いて見えた自分に

寄せられた賛辞の花言葉

僅かな間のほろ酔い気分

素敵な詩なんて忘れたよ

覚えているのは母のメモ

紙切れに書かれてた文字

「あたためて食べてね」

どんな詩歌もかなわない

普通の人の日常の気持ち

人々に正装があるように

木も生きるために着飾る

だから極論になるけれど

桜など散っても構わない

花なんて褒めなくていい

生きてるのは樹木なんだ

たとえ淋しく枯れたって

生きてる限りは命なんだ

花見で酔った歌声が響く

酔っぱらいは苦手なんだ

幹にみんなで寄り添って

お茶とおにぎりがいいね

跳べ

君は叫び声をあげていい

獣のように吠えてもいい

君は疲れてるんじゃない

気力をなくしてもいない

アルミホイルで身を包み

自分を蒸し焼きにしてる

自分で自分を傷つけるな

自分を解放してあげなよ

もっと自由に暴れていい

もっと想いを放っていい

だれにも迷惑はかけない

だから遠慮しなくていい

自らを燃やして天を彩れ

見上げてごらん

自分を卑下している者は

自分と同等の者も見下す

自分を卑下していいのは

人を見下す自分を知る時

卑下をせずに謙虚であれ

常に誰をも見上げていろ

流刑の星

刑務所は罰を受ける場所じゃない
刑に服して犯した罪を償うところ

辛い、死にたい等と弱音を吐けば
甘ったれるなと言われるのが当然

塀の中で自由を説き始める者達は
詐欺師か頭がイカれてしまった者

塀の見えない囚人達は戯言をいう

地球は生命が宿る宇宙で唯一の星
異星人やUFOなど来ないのだと

塀の中へ散歩に訪れる人はいない
調査員と指導員しか入ってこない

華やかなスター達も塀の中の虚像
慈愛に満ちた慰問者が時折訪れる

そう、私たちは刑務所に生まれた
名前ではなく番号で呼ばれる身だ

生かされてる事だけで感謝すべき

希望を捨てず更生の道を歩むんだ

マイノリティ

力の強い者が支配する

往々にしてそれは数だ

多数決は民主主義の礎

正義とは人数の多い方

数の正義を唱える者は

その口で愛を唱えるな

命を慈しまない者には

自然を守る資格もない

愛は常に弱い側にある

愛は常に狭き門を通る

Wait

良いんだけど なにかちがう

ポジティブがもてはやされて

良いとこだけ認めようとして

違和感が悪もの扱いされてる

遠足用のおやつを思い出そう

限度額が決められているから

本当に食べたいものが選べる

好きなお菓子も選考に落ちる

心の奥の感覚を大切にしよう

ネガティブが必要な時もある

贅沢を望んではいけないけど

本命を見失っちゃダメなんだ

Hello My Friend

想いをカタチにできなかった
微笑みを交わすしかなかった
幼児といわれたあの頃の僕達

紡ぎだす絹糸で鮮やかに彩る
もどかしさも胸の震えもない
作られた形容と説明の大人達

僕たちは全身をさらけだして
何一つ触れさせまいとしてる

だからあの頃に僕は戻るんだ
言葉を知らず触れ合えた頃に

ストレート

遠慮なく重くなれ

重いと感じる非力な者は相手にするな

思いっきり暗くなれ

曇ってしまう根暗な者は相手にするな

性格が円くなった?

老いて生命力が弱まった者の綺麗事だ

大人ぶる必要はない

恐竜の1%未満しか歩まぬ者の戯言だ

ストレートにぶつけてこい

直球が怖くなった時は人間やめてやる

語らない想いを

きみが彼の心の支えでも

命を捧げる愛の相手でも

きみには何の義務もない

命を人質にされてるだけ

愛を餌に釣られてるだけ

.

支えになってくれる人が

命を勝手に捨て去る人が

惜しいなら助ければいい

愛しいならつかめばいい

.

悲哀を奏でる吟遊者より

寡黙な労働者が示す愛を

最後の換算

死んでしまえば全ておしまい

無になってしまうかもだけど

ときどきふと感じることがある

死んだ後にどこかで目が覚めて

人生でやってきた事を振り返る

何かブックオフの査定に似てて

項目ごとに評価がつけられてて

たいてい自己評価とは全然違う

達成感のあったものは低評価で

ささいな行為に花まるの高評価

価値観がまったく違ってるんだ

洗脳されて生きていたのかなと

大切な何かを忘れてたのかなと

驚きと虚しさに包まれてしまう

ふと目を覚ますとまだ生きてた

大事な仕事の準備があったけど

困ってた友の相談を先にしよう

今後は優先順位は自分で決める

誰が何と言おうと異論は認めん

君の彼の気持ち

貴方はとてもやさしいのね

きみがそう感じているだけ

相手に止めを刺さないのは

汚い血を見たくはないだけ

.

貴方っていつも素っ気ない

きみにそう思われてしまう

愛してると素直に言えない

綺麗なきみを汚してしまう

.

きみが思うより彼は冷酷だ

彼が思うよりきみは残酷だ

二人は命のやりとりをする

一つしかないものを賭ける

愛という名の真剣な遊戯に

メタモルフォーゼ

人の手足は

生き物を打つものじゃない

人の言葉は

心を傷つけるものじゃない

鳥の歌声は

人間を慰めるためにない

太陽と月は

擬人化されるためにない

分からない

分かったふりしてるだけ

変わらない

変わろうとしないかぎり

いつの日か

いのち尽きるその日まで

さなぎから

蝶へと変容を遂げるまで

壁の花

強風が吹き荒れた名残り

砂が消えた地面のように

堅めの地盤だけ残ってる

喧騒のパーティが終わり

百花騒乱の蜃気楼が消え

壁の花の君だけ残ってる

軽やかで華麗な砂粒たち

嵐が止んだら戻ってきて

また甘い囁きで溢れ返る

いつも壁を見ていた人は

その手を差し出すだろう

Mermaid

誰かのために生きちゃいけない

命が幾らあっても足りないから

自分のためだけに生きられない

息が苦しくて耐えられないから

酔った勢いで始めちゃいけない

みにくい姿を晒してしまうから

しらふのまま根を詰められない

未明には気を失ってしまうから

息を抜いて力を緩めてただよう

息を吸って元気を得て立ち上る

大海原のうねりに身をまかせて

泳ぎだした君は水に溶けていく

清流

高級グルメもいいけれど

真夏に飲む水ほど喉を潤さない

高スペックもいいけれど

真心のある人ほど心を潤さない

庶民から富豪になっても

無一文を脱した時ほど嬉しくない

初心が大事というよりも

無駄を排除した清々しさがいい

素朴で清純なものが好き

それはずっと変わることはない

運命

君はいつも遠くを見ていた

だから視野が広がっていて

目の前のこともよく見えた

.

君はいつも誰かを探してた

だから違えばすぐ分かって

近づいてくる人を見抜けた

.

青い鳥を追いかけてるだけ

だから自分でも疑っていて

簡単に何かを信じなかった

.

もう真実以外は求めてない

本物しか君は受け入れない

それが自ら選んだ道なんだ

抱き枕

淋しいときには一人になろう

だれにも頼らなくなるように

だれにも同情されないように

.

不安なときには主張をしよう

どんな批判も避けないように

どんな誤解も恐れないように

.

仲間ができたら二人になろう

増えすぎて見失わないように

二人の時を減らさないように

.

幸せになったらいなくなろう

どこかの淋しい人をさがして

どこかで君をさがしてる人を

Glory

良いことがあったら喜ぶ

そうじゃなかったら悲しむ

それは誰にでもできること

悪く見える状況の中に

一縷の希望を見出し

感謝すべきことに気づく

そういう者が最後に勝者となる

そうでなきゃ感動は生まれない

つまらない人生とは

あたりまえの生き方

楽もあれば苦もある道ではなく

つねに光を見失わずに進むこと

一寸先は闇

闇ならばまし

偽りの光明

人の目を欺く

真実への道はグレーゾーン

迷宮への扉には天使と悪魔

あいまいな世界

不安定を受け入れて生きる

カリスマに従う

示された答えを受け入れる

しらふで生きるか

酔ったまま死ぬか

だれも強制したりはしない

だから一人でも歩き続ける

天使

老人ホームの昼食時間 静かな高齢者と若い介護職

「済んだなら片づけるよ!」 耳元で尋ねる大きな声

「あ、待って 私が代わります」 ささやく小さな声

「がんばって食べようね」 やさしく語り掛ける


昼食後のトイレは長い行列 時計に目をやる職員

「今日からオムツにしよう!」 車いすを回転させる

「あ、私が代わりますから」 そっと近づく声

ひとつの尊厳が 失われなかった瞬間


職員の昼休み 賑やかに談笑する輪から出て

トイレタイムの名残の床を拭き また輪に戻る


誰も気づいていないけど 片田舎の施設で

ぼくは天使を見たんだ

欲しいもの

欲しいものを一所懸命さがす

もう見つからないんだろうな

そう絶望しかけたとき出会う

欲しいものを求めていたのに

見つかったなら手を出さない

なぜだろうって自分でも思う

なんだか安心してしまうんだ

大切なものは永遠に存在する

絶対いなくなったりはしない

だからつかみとる必要もない

だから欲しいものは求めない

それはずっと僕と一緒だから

包容力という名の 底が抜けたバケツ

ポジティブという名の 臭いものにフタ

底が抜けないほど 自分は丈夫だろうか

楽観視できるほど 自信があるだろうか

底が抜けていもいい 気を失ってもいい

そんな覚悟しかできない もろい存在だ

儚く散るしかない 微かな炎のような命

綺麗事でしかない 愛という名のもとに